年末の米国株マーケットの行方を考察!今最も注目したいIPO銘柄についても解説
2021.12.02
目次
12月の米国株市場予想
米国経済の現在の状況を知る上で欠かせない指標の一つに「S&P500株価指数(以下S&P500)」があります。
これはニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場している企業の中から、代表的な500社で構成された株価を基に算出された指数ですが、このS&P500の数値から様々な米国経済の特徴を知ることができます。実際、1950年~2020年におけるS&P500の月次パフォーマンスを見ていくと、12月は平均+1.39%であり、これは4月、11月に次いで3番目に高いパフォーマンスを出しています。
こうした「季節のアノマリー」と呼ばれる1年サイクルで訪れる米国相場の季節性を考えれば、例年12月の米国経済は11月からの強気相場が続くことが予想されます。
とはいえ足元を見れば、インフレ懸念や南アフリカでのコロナ変異株などでマーケットに嫌気が差し短期的に下落する局面がやってくることも予想されます。しかし、こうした状況になった場合に最も大切にする指標として「米国10年債利回り」があります。なぜ米国10年債利回りが重要なのかというと、株価と債券はシーソーのような関係にあり、米国10年債利回りが低ければ資金がマーケットに流れてくることが予想されるからです。
特に11月後半の米国マーケットは下落相場となりましたが、現在のように米国10年債利回りが1.5を切っている状態で金利が低いままである限り、強気相場が継続することが予想されます。
特にクリスマス時期に強気相場になる理由
12月の米国マーケットの特徴として、特にクリスマス時期に株価が高いことが多いです。今年の12月25日は土曜日のため休場日ですが、例年12月の4週目から5週目にかけては特に株価が上昇する確率が高いため、多くの投資家が強気の姿勢でマーケットに臨んでいるはずです。
なぜなら米国を含めた英語圏の国々の方にとってクリスマスは1年で最も重要な日の一つだからです。家族や友人、仕事関係者などにプレゼントを渡す習慣が日本よりもずっと浸透しています。そのため12月はクリスマス関連の出費が多くなる時期であり、それに合わせて様々な企業が商品広告を打ち出します。特に小売業などの企業にとってはクリスマス商戦の売上が業績を左右するほど重要な時期であるからです。例年、出来る限りクリスマス近くで利上げなどの経済政策を実施しない不文律のようなものが米国には存在しており、この時期はマーケットに水を差すようなニュースが出にくいことも安心材料の一つとなるでしょう。
また昨年のクリスマス時期はコロナ禍であった為、アマゾンなどオンラインで購入するサービスが伸びたのに対し、今年はアフターコロナ銘柄であるホテル株や航空株などの旅行関連株も注目です。具体的には航空株ならデルタ航空($DAL)、ホテル株ならマリオット($MAR)などが面白そうです。
タックスロスセリングに注目する理由
12月の米国マーケットのもうひとつの特徴が「タックスロスセリング」です。これは言葉の意味そのままの投資手法ですが、それまでに利益を得ていた投資家が税金対策として保有している株の中で最もマイナスの銘柄をあえて年末時期に損切りしてマイナスを出すことが増えていきます。
投資家は意図的に利益を縮小させて節税対策することを検討するのもこの時期の特徴だからです。裏を返せば、タックスロスセリングの対象銘柄になった株はこの時期に大きく下落するため、あえてリバウンドを狙って短期間で大きな利益を得ようとする投資家も一定数存在するのです。
タックスロスセリングの標的となる銘柄の多くがその年にIPO(新規公開株)したばかりの銘柄です。またIPO銘柄の中でも特に株価が下げ続けた銘柄がタックスロスセリングの対象となりやすい傾向にあります。
なぜIPO銘柄が狙われるのかというと、IPO銘柄はメジャー株と比べてボラティリティが高い傾向にあるからです。IPO銘柄の株価が大きく変動する理由としては、まだその企業自体への信用が投資家に蓄積されていないからです。例えばアップルなどが決算が悪かったとしても、それまでの実績があるため株が売られにくいのに対し、IPO銘柄は少しでも悪い決算やネガティブなニュースが報道されると信用を失い売りの対象となりやすいのです。
例年、12月の中旬ごろまでに売られ続けた銘柄はタックスロスセリングの対象となりやすく、この時期までに売られ続けたIPO銘柄が年末年始にかけて反転する可能性が高いことも注目ポイントとなるでしょう。
今最も注目したいIPO銘柄と上場から1年以内の銘柄
ここではタックスロスセリングの対象となる可能性もあるIPO銘柄としてマルケタ($MQ)とオートリー($OTLY)、また上場から1年以内の銘柄としてC3ai(シースリーエーアイ) ($AI)をご紹介していきます。
【マルケタ(MQ)】
マルケタは2021年6月9日にナスダックに上場した現在話題の後払い決済サービスであるBNPL(バイナウペイレーター)のプラットフォームを提供している会社です。
実際マルケタのサービスを利用する企業も多く、アファーム、ウーバー、スクエア、JPモルガンなど多数の企業がマルケタを使って自社発行のクレジットカードやデビットカードなどを発行しています。
上場後の株価は10月27日に最高値37.90ドルに到達して以降、現在まで株価は下がり続けており、タックスロスセリングの対象になる可能性もある銘柄の一つとして注目です。
・マルケタの執筆時点(11月29日)の株価22.05ドル
【オートリー(OTLY)】
オートリーは2021年5月24日にナスダックに上場したオート麦を原料とする植物由来の代替牛乳「オートミルク」などを提供する会社です。上場前から既に米国内で7500以上の小売店と1万店以上のコーヒーショップで製品を販売しています。また2021年3月からは米スターバックスがオートミルクをベースとした飲料を提供していますが、このオートミルクを提供しているのもオートリーです。乳製品の代替市場に注目が集まる中、確実に市民権を得ている企業の一つです。
上場後の株価は6月16日に最高値29.00ドルに到達して以降、現在まで右肩下がりで株価は下がっており、こちらもタックスロスセリングの対象になる可能性がある銘柄の一つとして注目です。
・オートリーの執筆時点(11月29日)の株価9.67ドル
【C3.ai(AI)】
C3.ai(シースリーエーアイ)は2020年12月9日にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した人工知能を使ったソフトウェアサービスをSaaS展開しています。顧客はC3.aiが提供するAIを使ってデータ分析、顧客管理、生産管理などに利用することが出来ます。
主なクライアントとしては米国空軍、ロイヤルダッチシェル、アストラゼネカなど様々な企業が利用しています。平均契約サイズも約1210万ドルと大きいことも特徴です。
創業者は元オラクル幹部でありベストセラー作家のトムシーベルです。
上場後の株価は2020年12月23日に最高値183.89ドルに到達して以降、現在まで大きく下落しています。
・C3.aiの執筆時点(11月29日)の株価38.38ドル
まとめ
これらの理由から12月の米国株は11月から引き続き強気相場になることが予想されます。特にS&P500などの指数はクリスマス前後に最高値を更新する可能性が高いです。
また個別株としてはタックスロスセリング銘柄に注目です。
こうした短期の相場感を意識すると同時に長期で米国株に投資し続けることが資産形成する上で最も大切だと筆者は考えます。
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