高まるESG投資に対する関心。今後はどうなる?

2022.03.16

ESG投資に対する関心が高まっていますが、ESG関連株のパフォーマンスも良好です。この記事ではESG投資にはどのような種類があるのか、今後も人気は継続するのかどうかについて解説します。

 

ESG投資とは

ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)に配慮している企業を重視して投資を行うことです。とくに機関投資家を中心に、企業経営のサステイナビリティ(持続可能性)を評価する考え方が普及し、国連の持続可能な開発目標(SDGs)と合わせて注目されています。

 

ESGの具体的な内容


環境(Environment)

二酸化炭素の排出量が多くないか、再生可能エネルギーを使っているか、環境汚染をしていないかなど、環境に配慮しているかどうかを判断します。

社会(Social)

労働環境の改善が行われているか、女性の活躍は進んでいるか、地域活動へ貢献しているかなど、社会に貢献しているかどうかを判断します。

 

ガバナンス(Governance)

収益を上げているだけでなく、不祥事を未然に防ぐ経営をしているかどうかを判断します。ESG投資は欧米を中心に広がっており、資産残高も年々拡大傾向にあります。2016年度時点で、すでに世界の投資額の26.3%(約22.8兆ドル)がESG投資になっているのです。

 

米国最大の公的年金基金であるカルパース(カリフォルニア州職員退職金年金基金)は、2012年にすべての投資判断にESGを組み込む投資原則を採用。日本でも世界最大の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、2017年に1兆円規模のESG投資を開始しています。

 

ESG投資の種類

ESG投資は、次の7つに分類できます。

ネガティブスクリーニング

武器やギャンブル・タバコなど、特定の業界や問題を抱える企業を投資対象から除外する手法です。つまり、ESGと逆方向のものには投資を行わないということです。


 ESGインテグレーション

これまで用いていたビジネスモデルや財務諸表の分析だけでなく、環境・社会・ガバナンスといった非財務情報(ESG分析)を組み入れる手法です。

 

企業エンゲージメント

対話(エンゲージメント)や株主総会における議決権行使を通じ、企業へESGに対応するよう働きかける方法。ESG投資においては、投資後に企業へ働きかけることも重要な戦略になるのです。

 

国際規範に基づくスクリーニング

国連グローバルコンパクトやILO(国際労働機関)などのESG分野での国際基準に照らし合わせ、その基準を満たしていない企業を投資対象から除外する手法です。

 

ポジティブスクリーニング

同業種の中で、ESG評価の高いセクターや企業を組み入れる投資手法です。人権問題や環境問題に取り組んでいるか、従業員への対応は適切かなどが判断材料になります。

 

サステナブル・テーマ投資

気候変動や水資源、食料やエネルギーなど、サステナビリティ(持続可能性)をテーマとする事業を行っている企業に投資する方法です。

 

インパクト/ コミュニティ投資

従来のような企業の財務的リターンだけでなく、環境問題や社会問題の解決、地域開発などの「社会的インパクト」を目的とした投資です。

 

世界のESG株は過去最大の上昇

ESGの取り組みや成果の評価が高い企業を集めた「MSCI世界ESGリーダーズ指数」は、12月に年初来上昇率が23%となり、これまでの年間上昇率に比べて最も大きく上昇しました。そして、ESG投資の好調なパフォーマンスを背景に、ESGファンドへの資金流入が続いています。

リフィニティブ傘下リッパーのデータによると、2021年1月から11月30日までに世界のESGファンドに流入した額は6490億ドルと、2019年の2850億ドル、2020年の5420億ドルから増加して過去最高を記録しました。

日本でも、ESG投資への関心は高まっています。2021年は新規設定ファンドが6年ぶりに増加しましたが、5本に1本はESG関連ファンドとなっているのです。また、2020年7月に設定された「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(ヘッジなし)」は、純資産残高が1兆円を超えています。

米国の株主総会も変わっています。2021年の株主総会では、環境や社会関連の提案が支持された割合が32%となり、2017年の21%に比べて上昇しています。投資家はリターンだけでなく、企業が環境や社会面の対策を強化しているかどうかを重視するようになってきているのです。

大手の機関投資家も、ESG関連の提案を支持し始めています。米ブラックロックは、気候変動関連の決議案の41%を支持。2020年は10%にとどまっていましたが、大きく上昇したのです。また、バンガードも2020年の14%から37%に上昇しています。

ESG投資への関心の高まりや好調なパフォーマンスを背景に、今後もESG投資は増えていくでしょう。

 

まとめ

ESG関連株のパフォーマンスが好調なので、今後もESG投資に対する関心は高まっていくでしょう。ただし、ESG関連銘柄だとしても元本が保証されているわけではありません。複数の銘柄に分散投資するなどして、リスク管理をきちんとするようにしてください。

山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。