2022年の株式市場は、金融相場から業績相場へと移行するか?

2022.02.10

はじめに

株式市場には4つのサイクルがあります。 そして現在は、金融相場から業績相場への移行期といわれています。 この記事では、株式市場のサイクルと今後の展望について解説します。

 

株式市場の4つのサイクル

株式市場には、「金融相場」「業績相場」「逆金融相場」「逆業績相場」の4つのサイクルがあります。このサイクルは繰り返し起こっており、今後の株式市場の動向を確認する上で役立ちます。

 

金融相場とは

金融相場とは、金融緩和による金余りを背景に、株価が上昇する相場のことです。不景気によって企業業績が下がると、景気対策として金融緩和が行われます。その結果、金余り状態となり、だぶついた資金が株式市場に流れ込むのです。

そして、「不景気の株高」となり、これを「金融相場」と呼ぶのです。

 

業績相場とは

業績相場とは、企業業績が良いため株価が上昇基調にある状態です。金融相場の次のサイクルでは、企業業績が回復しはじめます。そして、業績相場では金融緩和などのマクロ要因よりも、個別企業の業績などミクロ要因を背景に株価が上昇することが多くなるのです。

業績相場に移行すると、利益の見通し自体が株価の上振れ要因となります。業績相場になると、金融相場に比べて、個別企業の業績が重要になるのです。ただし重要なのは、利益の大きさではなく、市場の予想を上回るかどうかです。

好決算をだしても、市場予想を上回らないと株価がほとんど反応しないケースもあるので、注意が必要です。

 

コロナ禍による金融相場から2022年は業績相場へ

2020年のコロナ禍により、各国経済は大きな打撃を受けました。しかし、FRB( 米連邦準備制度理事会)などによる大規模な金融緩和を受け、株式市場に大量のマネーが流れ込み、各国の株価は上昇しました。

株価を左右する要因は、主に投資家の期待値でもある「PER(株価収益率)」と、利益(EPS=1株当たり利益)の動向です。金融相場では、金融緩和に支えられた先行き期待の改善(PERの上昇)による株高となります。

金融相場では、緩和マネーの行方に株式市場が揺さぶられやすく、企業ごとの業績はあまり材料になりません。しかし業績相場になると、PERがそのままでも、利益(EPS)の見通し自体の上振れ予想が株高要因となります。業績相場になると、金融相場に比べて個別企業の業績を見極めることが大切になるのです。

 

業績相場はグロース株よりバリュー株が有利

業績相場では金融緩和が終了し、金利が上昇しやすくなります。そして、金利が上昇する局面では、グロース株よりもバリュー株の方が優位になります。金利が上昇する局面では債券の利回りも上昇するので、投資家は株式の投資価値について慎重になるからです。

グロース株とは、売上や利益の成長性が高く、株価の大きな上昇が期待できる銘柄のことです。業績を急拡大させている企業や、革新的な商品やサービスを提供している会社がグロース株に該当します。

グロース株の企業は成長分野へ投資しているので、損益が赤字になることも少なくありません。ただ、損益が赤字であっても、今後の成長性に期待して投資します。

一方のバリュー株は「割安株」とも呼ばれ、資産や利益から算出される企業価値が、株価と比較して割安となっている銘柄のことです。今後の成長性が期待できなかったり、知名度が低かったりするため、投資家の関心が集まらずに割安になっていることが少なくありません。

バリュー株の選定には、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が低いかどうかで判断します。

業績相場では、グロース株は企業業績に比べて割高なことが多いので、本当にその価値は妥当なのか、株価は割高ではないかと考えられるようになり、売りが優勢になるのです。

反対にバリュー株は割安株なので、見直し買いが入りやすくなります。

 

スタグフレーションに注意

業績相場では、インフレ(物価上昇)が進む傾向があります。通常、インフレは株高の要因となります。インフレとは「インフレーション」の略で、モノやサービスの価格(物価)が継続的に上昇する状態のことです。1個100円だったものが数ヶ月後に120円になり、1年後には150円、2年後には200円になるといった状態になります。

当初200円で2個買えていたモノが、2年後には1つしか買えなくなってしまうのです。このように、インフレは「モノの価値が上がる一方、お金の価値が下がる」現象で、この状態が2年以上続くことをインフレと呼んでいるのです。

株は企業の収益を反映するので、モノの値段が上がるインフレの方が儲けは大きくなり、株価は上昇しやすくなります。企業の売上は「単価×数量」なので、インフレの時は単価も上昇し、利益が増加するからです。

ただし、景気が後退する中でのインフレ(物価上昇)は「スタグフレーション」と呼ばれ、株価にとってマイナスの材料になります。通常、景気が停滞する局面では、需要が落ち込むので物価下落(デフレ)の要因になりますが、原油価格の高騰など、原材料や素材関連の価格上昇によって、不景気でも物価が上昇することがあります。これが「スタグフレーション」です。

景気後退で企業業績も上がらず、賃金も上がらないので、生活者にとっては非常に厳しい状態になります。日本では1970年代のオイルショック時に、スタグフレーションになりました。

景気が回復して実体経済が良ければ、金融相場から業績相場へ移行して株価が上昇しますが、景気後退での物価上昇(スタグフレーション)が起こると、株式市場にはマイナスの要因になるので注意が必要です。

 

まとめ

2022年は各国の中央銀行が金融引き締めに入り、金融相場は終わる可能性が高いと考えています。 そして、景気も回復すれば業績相場に入り、株価の上昇は続きますが、景気が回復しなければスタグフレーションとなって、株価にはマイナス要因となります。2022年は金利が上昇する中、悪いインフレ(スタグフレーション)ではなく、良いインフレ(業績相場)になることを期待しています。

山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。