2022年米国経済の現在地と注目のETFについて解説します!

2022.01.13

はじめに

かつてアマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスが世界一の投資家であるウォーレン・バフェットにこんな質問をしたことがあります。

「なぜあなたのような投資戦略をみんな真似しないのですか?」

するとバフェットはこう答えました。

「ゆっくり金持ちになりたい人なんていないんだよ」

ここに投資をする上でとても大切な心構えがあるように思います。

特に富裕層の皆さんはこの言葉の真理に気づいているのではないでしょうか。

つまり複利の効果を使って長期間に亘って資産を育てることが最も王道の投資戦略なのです。

毎日のように様々なニュースが飛び交いますが、そうしたノイズに惑わされずに足元の状況と将来の展望を同時に考えることが投資をする上でとても重要です。

今回は米国経済の現在地と2022年の注目ポイント、注目ETFについて解説していきます。

 

1月のS&P500の見通し

1月のS&P500のターゲットは4700ポイントを予想しています。その理由として、米国株には季節のアノマリーと呼ばれる法則があり、例年11月~1月の間が1年で最もパフォーマンスが期待できる強気相場が続くからです。相場には説明がつかない流れのようなものがあり、少なくとも1月末までの米国株は強気のスタンスで投資を継続した方が利益を得られる確率は高いはずです。

振り返ると2020年に発生した新型コロナの影響は誰もが予測していない不測の事態でした。世界情勢も混乱し、本来であれば株価が下がり続けてもおかしくない状況ですが、世界各国の中央政府が財政政策を発動したことと、GAFAMを中心とした米国ハイテク企業は新型コロナの影響をほとんど受けず、その間に企業業績も伸ばし続けたことにより米国経済を牽引しました。

実際、S&P500のパフォーマンスは2020年に16%、2021年は年初来から約21%と大きく上昇を続けました。こうした上昇局面においては決まって米国経済の今後のパフォーマンスに疑問を投げかける意見も出てきますが、米国経済の長期での強気相場は始まったばかりと筆者は考えています。なぜなら強気相場は通常7年〜10年程度続くことが多く、2020年3月を起点に強気相場が始まったことを考えると、2021年12月はまだ長期トレンドの序盤戦と考える方が論理的だからです。こうした大局観を持ちながら日々のマーケット動向を観察することがとても重要です。

以上のような理由を踏まえて、短期で米国相場を見た場合、1月の米国株は強気の姿勢で臨んで良いと考えます。

 

FOMCと米国経済の現在地

FOMCとは米国の経済政策を決定する会合のことですが、直近では12月14,15日の2日間に亘ってFOMC(米国連邦市場委員会)がありました。このFOMCの発表によると2022年の米国経済の成長率は+4%と予想しています。米国のような成熟した資本主義先進国で+4%という数字はとても高いと考えて良いでしょう。また米国の失業率は2021年末時点で4.3%と低い状態で推移しています。つまり米国経済自体の状況は景気が良いのです。

では景気が良いから株価も上昇するのか?というと、株価は将来の期待値が織り込まれているため、今後S&P500などの株価指数はあまり上昇しない可能性が高いです。なぜならFOMC後のパウエル議長の発表によると、今後テーパリングを加速させることが確実となったからです。

減額ベースとしては米国債月200億ドル、MBS(住宅ローン担保証券)を月100億ドルに倍増させます。このテーパリングとは金融緩和政策を縮小させる出口戦略のことで、FRB(米連邦準備制度理事会)は資産購入減額を段階的に加速させることが決定的となりました。

つまり量的緩和の必要がなく、テーパリングが終了したのちに今度は「利上げ」が始まると考えられます。

 

投資家にとって最も注目するポイントはインフレと利上げ

現段階の利上げの見通しとしては2022年に3回、23年に3回の利上げが予想されています。

また米国のインフレ状況としては当初の予想以上に幅広く、ほぼ全業種に及んでいます。また米国企業の賃金上昇ペースもこの数年間で最も早いペースで上昇を続けており、今後のインフレ上昇圧力に繋がる可能性が懸念材料となっています。とはいえインフレは経済活動をする中で必ず訪れるサイクルです。そして多くのインフレは全体に波及し続けるわけではなく、部分的なインフレが続く展開となる確率が高く、今回のインフレも同じような流れになると予想しています

では米国相場は全て厳しくなるのかというとそうではないでしょう。2022年の米国株は指数自体の上昇は2021年と比較して鈍化するものの、引き続き緩やかに上昇すると考えられます。

実際、市場予想では2022年度のS&P500に組み入れられた企業の業績は平均+8%の成長が見込まれています。また企業の活発な自社株買いが2022年も引き続き継続されることから、これも米国経済にプラス要因となるはずです。そのため2022年のどこかの段階でS&P500も5000ポイントを突破するシナリオもあり得るでしょう。

 

2022年の米国相場はセクターによってパフォーマンスが異なる

今後の米国経済の行方を考える上で注目するポイントとしては「景気が強く、金利が高い」状況であることです。また原油価格のリバウンドの可能性も高いことから、消費循環セクター、工業セクター、エネルギーセクターに注目です。また金利上昇局面としては金融セクターにも注目です。これらのセクターは来年、S&P500のパフォーマンスよりもアウトパフォームすることが期待されます。

つまり2020年から続いた指数の上昇は抑制され、今までは指数を購入すれば良かった状況が一変し、今度は個別株投資に切り替える段階へと投資環境が移行しつつあるのです。そのことから2022年はセクターによってパフォーマンスが大きく異なることが予想されるため、投資する上でどのセクターと個別株を選択するのか、より難しい舵取りを求められることになるはずです。

また2021年よりもボラティリティの高い相場が続く年となる可能性が高く、来年は特にパウエル議長の発言に注目が集まり、その内容によってマーケットの動き方も変化するはずです。

 

年末年始に仕込みたい注目ETF

最後に米国経済の状況と行方を考察した上で、年末年始に仕込みたいETFを4本ピックアップしています。

「資本財セレクト・セクターSPDRファンド(XLI)」

米国の資本財セクターに該当する宇宙防衛、建築関連、流通業、陸海空の運送インフラなどの企業に投資できます。金利が高く、インフレの長期化が懸念されるような状況で注目のETFです。

組み入れ銘柄上位はユニオン・パシフィック(5.17%)、ユナイテッド・パーセルサービス(4.91%)、ハネウェル・インターナショナル(4.62%)、レイセオン・テクノロジーズ(4.05%)、キャタピラー(3.60%)などが代表的な銘柄です。

分配利回り1.25%、経費率0.11%です。

「一般消費財セレクト・セクターSPDRファンド(XLY)」

クリスマス商戦が好調な場合、一般消費財セクターは上昇する特徴があります。また景気が良く金利が高い今のような状況はXLYにとっては好材料になるはずです。

組み入れ銘柄の上位はアマゾン(21.06%)、テスラ(17.53%)、ホームデポ(9.56%)、マクドナルド(4.59%)、ナイキ(4.15%)などが代表的な企業です。

分配利回り0.55%、経費率0.11%です。

「WTI原油連動ETF(USO)」

WTI原油はテキサス州沿岸部の産出される油田の原油を指しており、ニューヨーク証券取引所で取引されているETFです。原油先物市場では世界最大の取引量であることから世界の原油価格のベンチマーク的存在です。

分配配当利回り なし、経費率0.85%です。

「バンガード・ラッセル2000ETF(VTWO)」

ラッセル2000とは米国の小型株指数のことで、企業の時価総額順位も1000~3000位が対象となります。S&P500がGAFAMなどの情報技術セクターが中心であるのに対して、ラッセル2000の場合は上位比率順にヘルスケア、金融、資本財、一般消費財と続いています。GAFAMなどのハイテクメジャー株が2022年は21年よりもパフォーマンスが落ち着くことを考えたとき、妙味のあるETFと言えるのではないでしょうか。また小型株は年末年始に株価が上がりやすいことも特徴です。

分配利回り1.35%、経費率0.10%です。

 

まとめ

2022年の米国株は難しい相場展開になることが予想されます。なぜなら相場の流れよりも企業業績の良い企業に投資することが求められるからです。

指数全体に投資をするインデックス投資の積立を継続しながら、個別株は高い利回り+PER(株価収益率)の低い銘柄に投資をするバリュー投資の時代へ突入すると筆者は考えます。

 

鈴木林太郎

個人投資家

資産運用とアーティストの作品を収集するのがライフワーク。どちらも長期投資で成長していく過程を眺めるのが好きです。米国株投資がメインなので、主に米国経済や米国企業の最新情報のお届けを心掛けています。