東証プライム市場は1841社。4月からの株式市場はどうなる

2022.02.24

はじめに

東証プライム市場が1841社でスタートすることが決まりました。4月からの新市場区分で株式市場はどうなるのかについて解説します。

2022年4月に新市場に移行

東京証券取引所は2022年1月11日に、4月4日に実施される株式市場再編後の上場企業の所属先を以下のように公表しました。

プライム         1,841社

海外投資家との対話を重視。流通株式時価総額100億円以上という条件があります。

スタンダード  1,477社

一定のガバナンス(企業統治)と流動性が確保された市場で、流通株式時価総額は10億円以上です。

グロース           459社

小規模で高い成長性が見込まれる企業が上場します。流通株式時価総額は5億円以上です。

2022年1月5日現在、東証1部には2,185社が上場していますが、約8割がプライム市場に上場することになりました。今回の市場再編は、投資マネーを呼び込む為各市場の役割をはっきりさせることが目的です。

2022年1月5日現在の東証一部は上場社数が2,185社で、全体の約6割が集中しています。この割合は、海外の主要市場と比べても企業数が多くなっていて、世界の主要市場の時価総額を見てみると、東京証券取引所は米国の市場に大きく差をつけられています。

世界主要市場の時価総額(2021年末時点)

ニューヨーク:29兆9679億ドル

NASDAQ : 26兆1532億ドル

香港 :8兆1425億ドル

東京:6兆6727億ドル

上海:6兆49億ドル

ロンドン:3兆7478億ドル

今回新設するプライムは、海外投資家が投資するようなグローバル企業が上場する市場と位置づけて上場基準を厳しくし、最上位市場としての質を高めようとしているのです。また、取締役会の3分の1以上を社外取締役で構成することや、国際的な基準にもとづく気候変動リスクの開示などが求められています。

市場再編は、世界的な潮流となっています。ドイツ取引所は国際基準に沿った情報開示を求められる「プライム・スタンダード市場」を2003年に設立したほか、米国のナスダック市場は2006年に最上位の「グローバル・セレクト市場」を新設しています。今回の東証の市場再編は、20年近く遅れたものなのです。


株主優待に変化

東京証券取引所の市場再編では、株主数の規定が現在よりも緩和されます。現在の東証一部に必要な株主数は2,200人以上ですが、プライム市場で必要な株主数は800人以上となり、要件が緩和されるからです。

そして、個人株主を確保するために株主優待を行っていた企業は、優待制度を見直す企業も増えています。2021年9月末までに1年間で株主優待制度を廃止した企業は75社と、過去10年で最も多くなりました。

上場企業全体に占める株主優待の導入比率は37.9%と、ピークの2019年から約2ポイント低下しています。株主優待は個人投資家に人気がありますが、優待の活用が難しい海外投資家や機関投資家からは不公平だという批判が根強くありました。

プライム市場では現在の東証一部よりも必要な株主数の要件が緩和されるので、株主優待の優先度は下がります。そして株主平等の観点から、還元策として株主優待よりも配当を重視する企業が増えているのです。

ただ、1日の平均売買代金や流通株式時価総額の基準を満たすため、個人株主づくりに取り組む企業もあります。住友織物やチノーなどは新たに株主優待を導入し、東証一部からプライム市場に移る方針です。

今後は株主数ではなく、平均売買代金や流通株式時価総額を満たすための株主優待が増えてくる可能性が高いと考えています。

 

株価指数への影響

投資家にとって市場再編の影響は、個別銘柄だけではありません。日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)といった指数への影響もあるからです。

日経平均株価

日経平均株価は、日本経済新聞社が算出・公表しています。日本経済新聞社は、日経平均株価の算出・公表を2022年4月の市場区分変更に合わせ、対象市場を東証1部から東証プライム市場に変更します。

TOPIX

TOPIX(東証株価指数)の改革も、企業に難しい対応を迫りそうです。2021年4月4日の新市場区分への移行から、TOPIXの見直し作業が開始されます。現在のTOPIXは東証一部の全銘柄で構成されていますが、市場再編に伴ってプライム市場へと変更されます。

ただ、TOPIXに連動した運用を行っている投資家への影響を考え、新しい基準で算出するTOPIXへの移行は、2025年1月まで段階的に実施する方針です。

プライム市場では流通株式時価総額100億円以上の基準を設けているので、その要件を満たさない企業はTOPIXから除外されます。指数に連動するパッシブ運用をしている機関投資家からの売りがでるので、売り圧力が高まってしまう恐れがあるので注意が必要です。

まとめ

どの市場に区分されるかは、株価にも大きな影響を与えます。とくにプライム市場に上場すればTOPIXをベンチマークにしている機関投資家からの買いが見込まれるからです。保有する株が新市場区分の上場基準を満たしているのかを確認するようにしましょう。

 

山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。