コロナ以降の世界経済の流れを考察する~自由貿易と保護貿易の先の世界~
2022.03.08
目次
自由貿易のメリットとは
「自由貿易」と聞いたときに多くの方にとっては当たり前の事であるため、そのメリットについて考えたことがないかもしれません。多くの経済学者も支持している自由貿易とは主に外国との貿易に使われる言葉ですが、グローバリゼーションが進み世界中で自由貿易が活発になることで経済は成長します。
例えば世界のGDPにおける輸出額の割合も1950年はたった7%に過ぎず、2000年以降は約25%まで増加しましたが、こうした傾向が進んだ背景には自由貿易によって利益が生まれる仕組みから説明することが出来ます。
まず貿易によって利益が出る仕組みの解説としてここにA国とB国があるとします。
A国は小麦の生産国でB国は石油の生産国です。この場合、お互いの国が得意な生産物を生産して交換することで、全体の生産物が高まり、両国が得をします。(例:アメリカとサウジアラビア)
仮にA国がB国よりも様々な分野で圧倒的に生産力があった場合においても、それぞれが特化した方が全体の生産性は高まる結果になります。(例:アメリカとメキシコ)
また自由貿易をすることでマーケットが拡大する「規模の経済」を活かすこともできます。自国の製品を国民に販売するだけでなく、海外にも輸出することで大量生産が可能になるのです。広く競争をすることでマーケットが拡大し大量生産が行われるため価格が下がり、イノベーションも加速します。これこそ自由貿易の大きなメリットなのです。
経済のグローバル化と国境の壁
グローバル化が進んでいる現在の資本主義社会においても、意外なほどに国境の壁が存在しています。これを検証したのが元カナダ国防大臣のジョン・マッカラム氏がカナダロイヤル銀行のチーフ・エコノミスト時代に行った研究です。これはカナダ国内の取引量とカナダからアメリカへの取引量を比較したところ、カナダ国内の取引量の方が約20倍近くあるというデータでした。これは他の先進国でも差の違いはあれど国内の取引量の方が3~10倍近く国外よりも多くなっています。つまりグローバリゼーションが進んでも経済には国境の壁があることを意味しています。
また物価と為替の視点からグローバル化を見ていくと、そこにも国境の壁が存在します。仮に世界が1つのマーケットであるならば、世界中の物価は同じで為替の変動に伴い物価も変化するはずです。しかし実際には為替の変動の半分程度しか物価は動きません。
これらの要因は何かというと、ほとんどの事業(通信やインフラなど)は国内向けの作られていることが挙げられます。また国外にサービスを展開しようとすると法律や税制の違い、文化や言語の違いなど、様々な課題を乗り越えなければなりません。実際、これらのコストを換算すると国境を超えるために商品価格の約40%が失われるという試算もあるのです。
2022年現在もグローバル化と国境の壁が存在しており、投資をする上でとても大切な視点の一つなのです。
保護貿易が起こる背景とは何か
多くの国は自由貿易を支持している一方で、輸入を制限することで自国製品を守ろうとする動きもあります。これが保護貿易です。具体的には輸入数量制限や関税によって輸入コストを引き上げることは多くの国が行っています。また保護貿易対象となった産業は海外との競争にさらされずに済むので、商品価格を上げて大きな利益を得ることも可能となるでしょう。しかし、その高いコストを支払うのは自国の消費者です。
ではなぜ保護貿易が支持されるのか、3つの視点から検証していきましょう。
①保護貿易をすると国内の仕事が減るのか?
たびたび論争にもなる輸入をすると本当に国内の仕事が減るという意見は正しいのでしょうか?実際、保護貿易は自国の製品や生産物を守る補助金的な役割を果たしますが、実は経済学の世界でも保護貿易によって国全体の雇用が増えている証拠はありません。言い換えると自由貿易によって国全体の雇用が減ったという証拠もないのです。実際、アメリカ、カナダ、メキシコの間で北米自由貿易協定(NAFTA)が1994年1月に発行された際に、特にメキシコでは雇用が奪われることを危惧した声が多く挙がりましたが、結果的には雇用が大幅に増加しました。
むしろ失業率が決まる背景には景気変動による自然失業率によって決まる要素が大きいことが見えてくるのです。
②保護貿易をすることで自国の労働者が分野転換のリスクにあうのか?
そもそも貿易が行われると、輸出中心の産業が増加し輸入中心の産業は減少します。つまり輸入が行われると国内の労働市場は確実に変化します。しかし貿易によって国全体の利益が向上することが多く、マクロ経済で見ていくと輸入によって仕事が減少するよりも国内の競争によって淘汰が起こる確率の方がずっと高くなるのです。つまり全ての要因に貿易に求めることは論理的ではない、という結果になるのです。
③貿易によって所得格差が広がるのか?
資本主義社会において所得格差と富の分配も常に議論の対象となります。確かに貿易の恩恵を受けた産業とそうでない産業が各国様々あるのも事実でしょう。しかし1番大きな要因はハイテク企業の生産性が増加したことです。実際、米国ですら自国経済の約6割強が国内向けの産業です。例えば米国の税理士と日本の税理士が競争をすることはないでしょう。
では所得格差が生まれる背景は豊かな国が貧しい国から安く仕入れて搾取していることが要因でしょうか?この議論の答えとしては、貿易によって格差が生まれるのではなく、貿易というグローバルな世界から取り残された国々が取り残されている現状によって格差が広がっているのです。このように保護貿易には様々な誤解があるものの、実際には失敗と成功の両方の事例が存在します。
保護貿易の典型的な失敗例が1970年代~80年代にかけてブラジルで行われたコンピュータ産業の保護政策です。これにより世界からは一時期10年以上遅れているとも言われ、コンピュータが時代遅れになるとコンピュータを使う様々な産業も技術革新が進まず時代遅れになるので、国際競争力が著しく低下します。
一方、保護貿易の大成功例が韓国です。主に建築機械メーカーは政府による補助金によって支えられたことで新たな産業が勃興し、現在の躍進へと繋がっています。
つまり保護貿易による成功例も部分的にはあるものの、多くの議論が論理的には矛盾が多く、自由貿易が全てを解決する訳ではありませんが、経済のダイナミズムを作り発展していくために欠かせないことは間違いないでしょう。
コロナ以降の世界経済の流れを考察する
コロナがいつ収束するのかを予想する上で、世界大戦や感染症の歴史を見ると収束までに大体5年程度の年月を必要としており、それに照らし合わせるとコロナ収束まであと数年の時間が必要ではないでしょうか。またコロナ禍においては各国でコロナの感染状況やコロナ対策が異なることも大きな特徴ではないでしょうか。その中でも米国は2021年の経済成長率5.97%という高成長を続けており、S&P500種指数に関しては年27%も上昇しました。
・キーワードはアフリカ
ではコロナ収束後の世界経済の流れですが、コロナ前と変わらず資本主義の世界は米国と中国を中心に回るはずです。その根拠として、地球上最後のフロンティアとも呼ばれるアフリカ市場への進出ラッシュが今後続くからです。実際、アフリカ大陸は日本人が想像する以上に大きく、米国や欧州、中国やインドを合わせたよりも面積が大きいのです。また現在のアフリカ大陸の人口は約13億人ですが、2050年には約25億人まで増加することが予想されています。
つまり成熟した米国企業と中国企業にもまだブルーオーシャンと呼べるほどの大きな可能性がアフリカにはあることを意味しています。その時に大切なことがいかに国境を低くグローバルに自社サービスを展開できるのか、またアフリカの国々も保護貿易ではなく、いかに自由貿易に舵を切り最先端の技術を導入して「リープフロッグ現象」へと導くことができるのか、これが今後経済発展の成否を分ける重要な必須条件となるはずです。
米国と中国のアフリカ進出、先進国とアフリカとの経済関係、これが世界経済の大きな流れとなると筆者は考えます。
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