中国恒大集団のデフォルト危機とリーマンショックの類似点と相違点
2021.10.08
はじめに
最近、中国大手不動産会社恒大集団(エバーグランデ)のデフォルト(債務不履行)懸念により、世界的にマーケットが混乱していることから、「リーマンショック級の経済危機になる」と予想している投資家もいる。果たして本当にリーマンショックのような経済危機が訪れるのか?本記事では恒大集団デフォルト危機とリーマンショックとの類似点・相違点について触れ、最後に筆者なりの意見を述べたいと思う。
中国恒大集団について
恒大集団は中国第2位の不動産開発会社だ。主に高所得者や中所得者を対象としたマンション販売を手がける。他にもヘルスケア、メディア、サッカーチームスポンサーなど幅広い分野で事業を展開している。昨年の売上高は約8.6兆円であり、日本最大手の三井不動産の年商が約2兆円であることから、いかに規模の大きい企業かということが伺える。
しかし、事業拡大に伴い有利子負債も拡大し、20年秋頃から資金繰りが逼迫。遂に21年秋、デフォルト懸念が騒がれる事態となった。恒大集団は9月23日の米ドル社債の利払いを行えていない。正式にデフォルトと認定されるまで30日の猶予がある間に、子会社の株式を売却するなどの対策を講じているが、21年末まで社債利払いの期限は殺到しており、自力でのデフォルト回避はほぼ不可能とまで噂されている状況だ。
恒大集団危機とリーマンショックの類似点
次に、今回の恒大集団デフォルト危機とリーマンショックの類似点について述べたいと思う
1.負債総額のインパクト
リーマンブラザーズは、当時アメリカで4番目に大きな証券会社であり、負債総額は約66兆円であった。一方恒大集団の負債総額は33兆円。負債総額はおよそ50%程度。いくら半分の規模とは言え、負債総額が市場に与えるインパクトは両社とも大きなものがある。
2.公的支援が見込めない点
恒大集団について、中国政府がデフォルトを防ぐことはないと筆者は考える。格付け大手のフィッチ・レーティングスは9月30日、「デフォルトが近い」とし当社の格付けをC CからCに格下げた。いくら大手の不動産会社であっても、一企業を助けるために公的資金を投入するといったことは考えにくい、というのが世界の投資家や格付け会社のコンセンサスだ。この点において、アメリカ政府が当時のリーマンブラザーズを救済しなかったリーマンショックと似ている、と言えるだろう。
恒大集団危機とリーマンショックの相違点
一方で、今回の恒大集団危機とリーマンショックではまるで状況が違う、と言った要素について述べようと思う。
1.事業会社と金融機関
リーマンショックの時は低所得層への住宅ローン、いわゆるサブプライムローン問題があった。ローンを金融商品化し、それに投資している金融機関は世界中に点在していた。複雑な商品性からリスクが不可視化していたことから、リーマンブラザーズの倒産を機にパニックに陥った投資家たちは、他の金融機関にもデフォルトが起こることを懸念。売りが売りを呼んで世界的な経済危機に陥った。
一方で今回は、恒大集団という一事業会社のデフォルト懸念に留まる。有利子負債のうち、中国国外の投資家が保有している債券は約2兆円に過ぎない。仮にデフォルトが起きても世界に与える影響は軽微だと考える。
2.過去の歴史から学んだ中国政府の対応
先ほど、中国による公的支援は見込めないのではないか、と述べたが、一方で無秩序な破綻とはならないのではないか、とも考える。恒大集団を放置し無秩序な破綻を招いたら、中国国内の個人投資家や不動産購入者を巻き込み大きな社会問題になりかねない。それは中国政府も避けたいと思っているはずだ。恒大集団をそうやすやすと救済することはないにしても、大きな経済危機を起こすことは何としても防ぎたいはずである。
おわりに
恒大集団のデフォルトは避けられないと筆者は考える。しかし、被害を最小限で抑えるように中国政府が対応するとも考えている。そのため、リーマンショックのような世界を巻き込んだ経済危機になる可能性は低いのではないか。今後のマーケット展望をうらなう重要なイベントであることは間違い無いだろう。恒大集団と中国政府の対応や諸外国の投資家の反応に注視していきたい。
人気記事 -TOP5-
公式Twitter